「サンデーうべ」掲載 医療クエスチョン? No.5
Q.インプラント でも骨吸収は防げない
最近、インプラントは第3の歯として、社会的にも認知されてきましたが、成功しているインプラントでも年間0.2ミリ未満の骨吸収が起こっています。
これは、インプラントをしたから、骨吸収がおこったということではなく、人間の生理現象であります。上顎も下顎も年齢とともに、唇側が吸収していきます。歯が抜けるとさらにその傾向が強くなり、骨の高さがなくなるとともに、唇側の吸収が著名になります。歯槽骨は歯を守るために存在する物であり、当然、歯が無くなれば、その役目を終え吸収していきます。
人によって吸収の差がありますが、確実に吸収していきます。歯の周囲の歯槽骨を増生し、歯を守っているのが歯根膜であります。歯根膜は歯の周囲を被い、感覚や衝撃緩和の役割を担っていますが、もうひとつ大きな役割として歯の周囲に一定の幅のある歯槽事を保つ役目があります。老人で歯の残根が1本しか残っていないのに、その周囲の骨は十分残っており、他の部分は骨が非常に吸収しているのが見受けられます。これはまさに歯根膜のおかげであります。
しかし、残念ながら現在のインプラントに歯根膜はありません。骨とインプラントは直接、接着しています。だから、長期的に観察すると、天然歯より、インプラント部位での骨吸収が進んでおります。また骨周囲に炎症が存在すると骨は吸収していきます。これらのことを考慮すると、口腔清掃を含めたインプラントのメンテナンスが大変重要になってきます。
山根歯科医院 院長
山根 進
「サンデーうべに掲載(平成21年8月28日)」